「とにかく乾くの速い」髪が本気で乾くドライヤー作った人のホンネって【開発秘話聞いちゃお!#1】

美容
こんにちは、ド文系なのに基本が開発マニア、化粧品の発表会でも一人だけ「このパッケージの金型は…」などと全然違うこと考えているオトナサローネ井一です。よくいるタイプのわかりやすいオタクです。

 

さて、皆様が日頃手にとる商品は、「あなたの手に取られるために誰かが意図を持って作った」何かです。

 

さまざまな分野で「ものづくり」に携わる人たちのうち、開発や企画、デザインなど「作った側」の人々に、「なんでコレ作ったの?」とオタクが感涙しながらしつこくお聞きするシリーズです。

 

今回は5月半ばに突如として「とにかく乾くの速い」とバズったシャープのドライヤーのお話。一度見たら忘れられない、特徴的な打ち出の小槌型のドライヤーです。

 

「欲しい」「気になる」と広がる反響に、本家のシャープ公式も応答。

https://twitter.com/SHARP_JP/status/1394094210848940035?s=20

 

なんでこんな形になったの? そもそも、なんで2台持ち…? いろいろ膨らむ疑問を企画担当者に聞きました。

 

[caption id="attachment_228362" align="aligncenter" width="225"] お話/シャープ株式会社 Smart Appliances&Solutions事業本部 国内スモールアプライアンス事業部 パーソナルソリューション企画開発部 末廣和弥さん[/caption]
美容師の2台持ち、見たことありますか?ポイントは風量ではなく……
--形といい風といい、どこから話を聞いていいかわからないくらいにツッコミどころの多いドライヤーです。

 

はい(笑)。このドレープフロードライヤーの最大の特徴は「2つの風が出る」ところです。美容師さんが片手に2つドライヤーを持つ姿にヒントを得たもので、2017年頃には原案がありました。2019年に初代のWX1が発売、この5月に速乾力をアップした2代めのWX2が登場したところです。

 

--待って、私はその2つ持つサロンさんを未体験なのですが、美容師さんが左右に立って乾かすことですか?

 

いえ、片手で2台持って乾かすんです。毛量の多い方でも素早く乾くので、プロ向けにドライヤーを2台つなげて片手で持つための専用リングも売られているくらいです。

 

--思わず画像を検索しました、本当だ、片手で2台持ってますね。すごいな。乾かす時間が短いほうが髪も傷みにくそうです。

 

そうなんです。ドライヤーは2015年前後に急激に高級化が進みました。その頃、インバウンド効果もあって、髪を素早く乾かすだけでなく、乾かしたあとの手触り、ツヤをアップし、髪そのものを美しく仕上げたいというニーズが急増したんです。

 

--もともとシャープにはイオン機能ドライヤーがありましたよね?

 

はい、2011年からプラズマクラスターイオン搭載のドライヤーを販売していました。プラズマクラスターには髪の毛をサラサラにしたり潤いを与えたりする効果がありますが、それとは別に、より速く乾かすためにはどんな風の出し方をすればいいかを追求して、「2つの風」に至ったのです。

 
この「打ち出の小槌スタイル」にたどり着くまでの紆余曲折とは?


--素人考えの質問なんですが……1つの風口の左右にスリットがあり、左右両方から風が出る仕組みです。1つの風を2つに分けると、その分風量が落ちませんか?

 

そもそもサロンのドライヤーの風量はそんなに強くないんです。ということは、美容師さんの2台持ちは風量ではなく、同じところから2カ所に風を当てるのがポイントなのでは?と。

 

--ああ、わかります、美容院のドライヤーって、弱めなのになぜか乾きます。あれは風の当て方なんですかね?

 

はい、研究の結果、スポット状に当てた2つの風で髪がドレープ状になびき、風が当たる面が増えることで速乾性がアップすることがわかりました。ですが、2つの風を1本にするということは、まずはその分だけ大きなドライヤーを完成させないとなりません。

 

--2つ分のドライヤーを1台つにするということですもんね。ハードルがいきなり上がりました。

 
最初はただ吹出口を大きくしてみました。でも、速く乾くことにはつながりませんでした。そのあとも延々、数えきれないくらいやり直しました。恐らく、吹出形状の検討試作は30回以上、3Dプリンターをフル稼働で、もうずっとウチがプリンターを使ってる(笑)。風路検討もこれとは別に試作しています、数えられない……。インスタにも開発段階の試作をUPしていますが、開発チームからの最初の提案は、ティッシュ箱のような四角でした。
 

https://www.instagram.com/p/COt_uEjDVJ0/

--びっくりするくらいぜんぜん違う形状ですね? ここから小槌にたどりつくまでは長そうだ。

 
本当に(ため息)。このあと、ノズルの長い形状で2つの吹出口を作ったり、ノズルの長さを調整してみたり、モーターとヒーターを並べて設置しているのを、一つに重ねてまとめたり、モーターの種類を変えてみたり、モーター2個つかってみたり……。
 

--どこがいちばん大変だったか……全部大変だったんですよね?

 

はい、どの調整も大変でしたが、一番しんどかったのはやはり左右の吹出口の位置関係でしたね……。

 

--遠い目をなさっていますが、具体的にはどういう点で……?

 

2つの風が近いと髪にあたるときには1つの風になってしまうし、離れすぎると頭の外側に風が流れてしまって速く乾かないんです。従来型のノズルの長いドライヤーの先端を2つにして試作しても、風も弱く、ドレープを作る風ができませんでした。が、ノズルが短い方が、風を効率よく出せ、短い方が、腕も楽で使い心地もよいことがわかりました。

 

https://www.instagram.com/p/COuwPaxja4y/

--だいぶ「小槌型」に近づきました。この2つのノズルが左右のスリットに進化していくのですか?

 
さすがにこの形だと、商品デザインとしても、ドライヤーとしても難しいですよね。ここからプロダクトデザインに落とし込む試行錯誤が始まるのですが、あるときデザイン・技術・企画で打合せをしていた際、この丸みを帯びたシンメトリーの初期スケッチがふいにできました。その時は、「めっちゃ新しいやん!」と、みんなで興奮したのを覚えています。

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